神社の屋根や灯籠、古い建物の瓦などで見かける「三つ巴紋(みつどもえもん)」。
三つの渦が円を描くこの紋章には、実は右向きと左向きの違いがあります。
神紋・家紋の研究で知られる丹羽基二氏の著作「神紋総覧 (講談社学術文庫)」(*)によれば、本来は「オタマジャクシの頭」がどちら向きに回っているかによって、右か左かを判断するのが正確な見方とされています。
ところが、時代が下るにつれて「尾の流れ」や「見た目の印象」で呼び分けられるようになり、本来の定義とは逆の名称が広まってしまったケースも少なくないようです。
- 丹羽氏の神紋調査は旧村社、無格社以下の小祠を除く全国の著名な神社が対象。
- 丹羽氏の著書で神社から提出された社紋について「右三つ巴」「左三つ巴」のほか「巴」などとテキストで記載。丹羽氏によると、神社からの情報はそのまま掲載し、あえて修正しなかったとのこと。ただし各神社の社紋自体は掲載されていなかったので、形は確認できなかった。
- 福岡県神社誌を見ると、社紋の記載がなかった。
この「豊のくにあと」では、宇佐神宮が公式に伝えている「左三つ巴紋」を基準とし、それとは反対の向きを、一般的に流通している呼称に従って「右三つ巴紋」と表記しています。
本記事では、この表記ルールのもとで話を進めていきます。
普段はあまり意識されませんが、この向きの違いが何を意味しているのかを考えると、神社の見え方が少し変わってくるかもしれません。

「右」か「左」かという呼び方はともかく、紋そのものの形が変わるわけではありません。
文字による記録が一般的でなかった時代には、名称ではなく「形」を見て、記憶し、受け継いでいた可能性も考えられます。
以前、宇佐神宮とは反対向きの三つ巴紋を用いている愛媛県の神社をよく知る方から、こんな話を聞いたことがあります。
「紋の向きは、絶対に変えてはならないと、ご先祖から伝えられていたそうです」
理由や由来は詳しく語られませんでしたが、
“向き”そのものが意味を持ち、意識的に守られてきたことだけは、確かに感じられる言葉でした。
右巻きと左巻き、どちらがどっち?


一般的には、
- 尾が時計回りに流れているものを「右三つ巴」
- 反時計回りのものを「左三つ巴」
と呼びます。





名称を考えず、シンプルに形だけ見たら、グレーの三つ巴紋が反時計回り、赤い三つ巴紋が時計回りに見えました。
ChatGPTにも尋ねてみたら同意見でした。
形から考えてみるのも面白いかもしれません。
回転の向きが持つ意味
世界各地の象徴表現や、日本の古い信仰では、「回る向き」に意味を見出す考え方があります。
たとえば、
- 時計回りは、広がる・動く・生まれる
- 反時計回りは、収まる・鎮める・留める
といったイメージです。
太陽が東から昇り、西へ沈む動きも時計回りであり、そこから「生成」や「勢い」を連想する考え方もあります。
一方、反時計回りは、力を内側に留める、落ち着かせる動きとして捉えられることもあります。
中世以降の陰陽道的な解釈として、向きには陰・陽の意味がある場合も
中世以降の陰陽道的な解釈では、
- 時計回り=陽・動
- 反時計回り=陰・静
と整理されることがあります。
ただし、これは時代や地域で逆転する場合もあり、一律に当てはめられるものではありません。
巴紋は自然のかたち
「巴(ともえ)」の語源には諸説ありますが、
その形は
- 渦
- 水の流れ
- 雷
- 雲
- 弓を射る際に手首に巻く革製の保護具「鞆」
ではないかと諸説ありますが、大変古くからある紋であることは間違いないようです。
このサイトで追っているのは宇佐神宮(左三つ巴紋)と逆無きの三つ巴紋(右三つ巴紋)


宇佐神宮の「左三つ巴紋」とは逆向きの三つ巴紋。
中央の大きな神社ではその向きが主流ですが、九州北部の古い神社などでは、ひっそりと右三つ巴が残っている例があります。
右三つ巴紋を追っていくと、「古墳や遺跡の近くや上に建つ神社」、「古くから祭が行われている神社」や、「大変栄えていたはずなのに情報がほとんど無い神社」などと、特徴的な神社が見つかるため、気になって調べ続けています。






それは、長い歴史の中でも消えきらなかった「何か」の痕跡なのではないか。
そんな仮説を手がかりに、右三つ巴という小さな違和感をつなぎ合わせながら、日本の古層を見つめ直しています。
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