豊前神楽の鬼について、少し気になっていることがあります。
豊前市にある大富神社。
ここで神楽の鬼について調べていると、鬼と猿田彦大神が結びつく話に出会いました。
大富神社の神楽に登場する鬼は、ただの「鬼」ではなく、猿田彦大神であるという伝承があるそうです。
鬼といえば、どうしても怖いもの、退治されるものというイメージがあります。
けれど、神楽の中では、必ずしもそうではありません。
豊前神楽では「鬼神」と呼ばれる存在が登場します。
そして、その鬼が猿田彦大神だという。
ここが、私には少し気になりました。
猿田彦大神といえば、天孫降臨のときに道案内をした神として知られています。
「道の神」とされることもあります。
その猿田彦大神が、神楽では鬼の姿で現れる。
なぜなのだろう。
鬼と神は、私たちが思っているほどきっぱり分かれていたものではなかったのかもしれません。
そう考えると、国東半島の修正鬼会で、鬼が仏の化身として現れることも思い出します。
国東では、鬼は退治するだけの存在ではありません。
鬼が現れ、僧侶や人々の間を歩き、災厄を払い、福をもたらす存在として扱われます。
豊前神楽の鬼と、国東の修正鬼会。
どちらも「鬼」という名前を持ちながら、私たちが普段思い浮かべる鬼とは少し違っています。
ただ、だからといって、この二つが同じ信仰から生まれたものだとは、まだ言えません。
豊前神楽の鬼が猿田彦大神だという伝承と、国東の鬼会で鬼が仏の化身とされること。
今の私が確認できているのは、まずこの二つです。
そして、もう一つ気になっていることがあります。
明治の頃、神楽のセリフやストーリーが変えられたという話を、以前、中津の古社の宮司さんから聞きました。
神楽だけでなく、明治には神社の名前や御祭神が変わった例もあります。

そう考えると、今残っている神楽の姿が、昔からまったく同じだったのかどうかも気になります。
ただ、ここから先はまだ分かりません。
「鬼は神だった」
「鬼は仏だった」
「昔の信仰は一つにつながっていた」
と、簡単にまとめてしまうこともできそうですが、私はもう少し慎重に見てみたいと思っています。
大富神社の鬼は、なぜ猿田彦大神なのか。
そのこと自体が、今の私にはまだ一つの問いです。
まだまだ、豊前の神楽を見て歩きたいと思います。
関連記事


