神社の御祭神を調べていると、「大山咋神」「大山津見神」「大山祇神」という名前を見かけることがあります。
どれも「おおやま」から始まり、山に関係する神として紹介されることも多いため、同じ神なのか、それとも別の神なのか、分かりにくいと感じる人もいるのではないでしょうか。
実は、この三つの神名は、すべて同じものではありません。
まず、大山津見神と大山祇神は、基本的に同じ神を指す表記の違いです。一方、大山咋神は、古事記の系譜では別の神として登場します。
今回は、それぞれの神の違いを整理してみます。
大山津見神と大山祇神
大山津見神(おおやまつみのかみ)は、『古事記』の神生みの場面に登場する山の神です。
伊邪那岐命と伊邪那美命によって生まれた神で、天孫降臨の段では、娘の石長比売と木花之佐久夜毘売が登場します。
また、須佐之男命が八俣の大蛇を退治する話に出てくる足名椎・手名椎も、大山津見神の子とされています。
この神は『日本書紀』では「大山祇神」と表記されます。
つまり、大山津見神と大山祇神は、基本的には同じ神を指しています。
神社では「大山積神」と表記される場合もあります。愛媛県今治市の大山祇神社では、神社名を「大山祇神社」、御祭神名を「大山積神」としています。
同じ神であっても、古典や神社によって表記が異なることがあるのです。
大山咋神は別の神
では、大山咋神(おおやまくいのかみ)はどうでしょうか。
大山咋神は『古事記』の大年神の系譜に登場する神です。
父は大年神。別名を「山末之大主神」といいます。
『古事記』には、近江国の日枝山、現在の比叡山と、葛野の松尾に鎮座する神として記されています。
現在の日吉大社や松尾大社の祭神として知られています。
大山津見神とは、名前が似ているものの、古事記では異なる系譜に登場する神です。
「大山」という言葉が共通していることから混同されやすいのですが、同じ神として扱うことはできません。
名前が似ているのはなぜだろう
大山津見神と大山咋神。
どちらも山に関わる神ですが、その神名の意味については、それぞれ異なる解釈があります。
大山津見神の「山津見」は、山の霊、あるいは山をつかさどる存在を表すと考えられています。
一方、大山咋神の「山咋」については、山の地主神を意味するという説や、山頂に打ち込む杭に関係するという説などがあります。
いずれも山に関わる神であることは共通していますが、名前の成り立ちや神話の中での位置づけは異なります。
神社で祀られる神を調べるときに
神社の御祭神を調べていると、同じような名前の神が出てくることがあります。
また、古典では別の神として記されていても、地域の信仰や神社の由緒の中で、同一視されている場合もあります。
そのため、神名だけで判断するのではなく、どの文献にどのように記されているのか、また、その神社ではどのような由緒で祀られているのかを見ていく必要がありそうです。
大山咋神と大山津見神、大山祇神。
名前の似た三つの神を並べてみると、神話に記された神の系譜と、各地で続いてきた神社の祭祀が、必ずしも同じ形ではないことにも気づきます。


