福岡県宗像市にある織幡神社。
境内を歩いていると、境外にえびすさまを祀る小さな祠があります。
以前、ここを訪れたとき、少し変わったお参りの仕方に気づきました。
祠の前に棒が置かれていて、それを使って音を立ててお参りするのです。
なぜ、音を出すのだろう。
調べてみると、えびすさまは耳が遠い、という言い伝えがあることを知りました。
えびすさまは耳が遠い
えびすさまを祀る神社の中には、参拝のときに音を立てる風習が残っているところがあります。
よく知られているのが、京都市東山区の京都ゑびす神社です。
ここでは、まず本殿の正面で参拝し、その後、拝殿の左側に回って戸板を叩きます。
えびすさまは年を重ねて耳が遠くなったため、正面からお参りしただけでは願いが届かないかもしれない。
そこで、肩を叩くように戸板をトントンと叩き、もう一度お願いを伝えるのだといわれています。
大阪の今宮戎神社などでも、本殿の裏側で音を立てて参拝する風習が知られています。
神様にお願いをしたあと、もう一度、音を立てて知らせる。
なんとも人間味のあるお参りの仕方です。
いつから始まったのか
ただし、えびすさまが耳が遠いという話は、古い神話に記されたものではありません。
えびす神には、蛭子神や事代主神など、複数の神が結びついていますが、いずれの神話にも、耳が遠いという性格がもともとあったわけではないようです。

京都ゑびす神社の戸板を叩く風習については、参拝者が拝殿の格子の隙間から賽銭を入れようとしたことが始まりだった、という説明もあります。
その後、板を叩く行為に「耳の遠いえびすさまに知らせる」という意味が結びついていったというものです。
一方、神社周辺の人々の間で自然に広まった参拝方法だという紹介もあります。
現在見られる風習が、すべて同じ経緯で始まったとは限りません。
織幡神社の祠で行われているお参りも、京都や大阪のものと同じ由来なのかは、まだ分かりません。
音を立てて、神様に知らせる
織幡神社で見た、棒を使って音を出すお参り。
その場では、特別なことだとは思わずに見ていました。
けれど、後から調べてみると、えびすさまには耳が遠いという言い伝えがあり、ほかの地域にも音を立ててお参りする風習が残っていることを知りました。
神様に願いを伝えるために、声だけでなく、音を使う。
そこには、神様を身近な存在として感じてきた人々の姿があるようにも思います。
えびすさまは耳が遠い。
そんな言い伝えが、各地の祠や神社に残るお参りの仕方とともに、今も伝えられています。
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