玄武はなぜ水神でもあるのか――北を守る神と、八代妙見祭の亀蛇

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玄武といえば、亀と蛇が一体になった姿を思い浮かべます。

中国に起源を持つ四神の一つで、東西南北のうち北方を守る神獣です。

ところが、この玄武には、北を守るだけでなく、水を司る神としての性格もあります。

そして、熊本県八代市の妙見祭にも、亀と蛇が一体になった生き物が登場します。

出典:時事通信トレンドニュース

亀蛇(きだ)、地元では「ガメ」と呼ばれるものです。

北を守る玄武と、北極星や北斗七星を神格化した妙見神。

そして、亀と蛇の姿、水との関わり。

それぞれを調べていくと、いくつかの興味深い共通点が見えてきました。

目次

北方を守る四神の一つ、玄武

玄武は、中国に起源を持つ四神の一つです。

四神とは、東西南北の四方を守護するとされた神獣のこと。東の青龍、西の白虎、南の朱雀、そして北を守るのが玄武です。

その姿は、亀に蛇が巻きついたものとして表されます。

では、なぜ北方を守る玄武が、水とも結びついているのでしょうか。

その背景にあるのが、中国の五行思想です。

五行思想では、木・火・土・金・水という五つの要素を、方角や季節、色などと対応させています。

北は「水」、季節では「冬」、色では「黒」に対応します。玄武の「玄」という字にも、黒や深い色を表す意味があります。

つまり、北方を守る神獣である玄武は、五行思想の体系の中でも水と結びつく存在なのです。

亀と蛇が一体になった姿

玄武の特徴は、亀と蛇が一体になっていることです。

古代中国では、亀は長寿や霊性を持つ生き物として重んじられてきました。一方、蛇もまた、脱皮を繰り返すことなどから、生命や再生と結びつけて考えられることがあります。

ただし、玄武の亀と蛇が一体になった姿について、何を象徴しているのかを一つに定めることはできません。

北方、水、冬、亀、蛇。

こうした複数の要素が重なり、一つの神獣の姿を形づくっているようです。

八代妙見祭に登場する亀蛇

この亀と蛇の組み合わせを見て、思い浮かんだのが熊本県八代市の妙見祭です。

八代神社は、かつて妙見宮と呼ばれていました。

ここで祀られている妙見神は、北極星や北斗七星を神格化した星の神です。

毎年行われる八代妙見祭の神幸行列には、亀の胴体に蛇の頭を持つ想像上の生き物「亀蛇」が登場します。

地元では「ガメ」と呼ばれ、祭りを彩る存在として親しまれています。

八代市の文化財解説によると、亀蛇は、妙見神がこの生き物に乗って海を渡ってきたという伝承にちなむものです。

その姿は、北方を守る神獣・玄武とよく似ています。

ただし、八代市の解説では、亀蛇を直接「玄武」とは呼んでいません。

亀と蛇が組み合わさった姿には共通点がありますが、両者がどのような関係にあるのかは、別に考える必要がありそうです。

妙見神が海を渡ってきたという伝承

八代妙見宮の社記などに残る由緒では、妙見神は中国や百済などから海を渡ってきたと伝えられています。

例えば、社伝の一つでは、白鳳期の680年頃、中国の明州から亀蛇の背に乗って八代の竹原津に上陸したとされています。

もちろん、これは神社に伝わる由緒や伝承であり、その年に実際に渡来したことを示す歴史資料とは区別しなければなりません。

ここで気になるのは、星の神である妙見神が海を渡ってきたという伝承と、その乗り物が亀と蛇を組み合わせた姿で表されていることです。

玄武もまた北方と水に関わる神獣です。

この二つを並べてみると、北という方角や水、亀と蛇の姿が、どのように結びついてきたのかという疑問が浮かんできます。

八代の妙見信仰と水

八代の妙見信仰には、水との関わりを示す記録もあります。

熊本県教育委員会が刊行した文化財調査報告書では、八代の妙見信仰が持つ水神としての性格にも触れられています。

そこには、妙見宮にまつわる湧水の発見譚や、神幸行列が山中の泉「弘法清水」に立ち寄る行事などが紹介されています。

また、妙見を祀る地域で雨乞いが行われていた記録もあります。

こうした事例を見ると、八代の妙見信仰は、星の神を祀るだけでなく、地域の水や暮らしとも関わってきたことがうかがえます。

ただし、これらの記録だけから、妙見信仰そのものが水神信仰を起源としていたとまでは言えません。

北、星、水、亀と蛇

今回調べてみて、いくつかの要素が目に留まりました。

  • 玄武は北方を守る四神の一つで、五行思想では水と結びついている。
  • 妙見神は北極星や北斗七星を神格化した星の神である。
  • 八代妙見祭には、亀と蛇が一体になった亀蛇が登場する。
  • 八代の妙見信仰には、湧水や雨乞いなど、水に関わる記録が残されている。

これらがすべて一つの起源から生まれたものなのか、あるいは異なる信仰や文化が重なり合った結果なのか、今のところ分かりません。

ただ、北を守る玄武と、北の星を神格化した妙見神。そして、亀と蛇、水との関わり。

八代妙見祭の亀蛇を眺めるとき、こうした背景を知っていると、また違ったものが見えてくるかもしれません。

参考

1. 熊本県教育委員会『熊本県文化財調査報告第39集』1980年
妙見信仰と水との関係、八代妙見宮の湧水、神幸行列が立ち寄る泉、雨乞いの記録。
報告書PDF(全国遺跡報告総覧)

2. 八代市「妙見宮祭礼の亀蛇舞い」
亀蛇の形状、妙見神が亀蛇に乗って海を渡ってきたという伝説、亀蛇の奉納開始時期。
八代市公式ページ

3. 国指定文化財等データベース「八代妙見祭の神幸行事」
妙見神が北極星・北斗七星の神格化であること、亀蛇が妙見神の乗り物とされること。
文化庁データベース

4. 八代妙見祭公式サイト「妙見祭の由来・由緒」
中国渡来説・百済渡来説、八代に伝わる妙見神の由緒。
八代妙見祭公式サイト

5. コトバンク「玄武」
四神における玄武の位置づけ、北方と水の関係、『本朝文粋』の記述。
玄武の解説

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