亀と蛇は陰陽一対だったのか――中国の古い亀蛇観と、八代のガメ

亀
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前回、八代妙見祭の「亀蛇(きだ)」について、玄武との共通点を取り上げました。

亀と蛇が組み合わさった姿は、中国の神獣・玄武にも見られます。

そこで、もう一つ気になったことがあります。

古代中国では、亀には雄がおらず、蛇と交わって子をなすと考えられていたというのです。

もしそうした考え方があったのなら、亀と蛇の組み合わせには、単に二種類の生き物を合わせた以上の意味があったのかもしれません。

目次

亀には雄がいないという考え方

中国の古い文献には、亀には雄がおらず、蛇を雄としてつがいになるという考え方が記されています。

たとえば、晋代の張華が著した『博物志』には、亀には雄がなく、蛇と気を通じることで孕むという趣旨の記述があります。

こうした考え方は、後の時代にも書物などを通じて伝えられていきました。

もちろん、これは実際の亀の生態を説明したものではありません。

こうした考え方は、後の時代にも書物などを通じて伝えられていきました。

一方で、亀にも雌雄があるとして、この説を退ける見方も現れています。

中国では、亀と蛇を雌雄の関係として捉える考え方が古くからあった一方で、それとは異なる見方も存在していたのです。

亀と蛇が組み合わさった玄武

中国の四神の一つである玄武も、亀と蛇が組み合わさった姿で表されます。

玄武は北方を守る神獣です。東を青龍、西を白虎、南を朱雀が守り、北を玄武が守るとされました。

北方は五行思想で水と結びつけられているため、玄武も水と関わる存在として捉えられてきました。

亀と蛇が一つになった玄武。

この姿については、亀と蛇を雌雄の関係とする古い考え方が背景にあったのではないか、という解釈があります。

また、事典類には、玄武の亀と蛇が絡み合う姿について、冬の世界の復活をもたらす「宇宙的な聖婚」の観念がうかがえる、という見解も紹介されています。

少し難しい言葉ですが、異なるものが結びつくことで、新しい生命や世界の再生につながるという考え方です。

亀と蛇の組み合わせは、単なる動物の姿ではなく、陰と陽の結びつきとして解釈されてきた可能性もあるのです。

八代のガメも、陰陽一対だったのか

ここで、八代妙見祭の亀蛇に戻ります。

八代市の解説によると、亀蛇は亀と蛇が合体した想像上の動物です。

妙見神が亀蛇に乗って海を渡ってきたという伝説にちなむものとされ、祭礼に登場するようになったのは、江戸時代の天和・貞享頃(1681年から1687年頃)と推定されています。

国指定文化財等データベースでも、亀蛇は妙見神の乗り物として紹介されています。

ただし、八代の亀蛇について、陰陽の和合を表すものとして作られたという説明は、現在確認できる公式資料や文化財解説には見当たりません。

そのため、ガメが陰陽一対を直接表していると断定することはできません。

一方、中国には、亀と蛇を雌雄の関係として捉える考え方があり、亀と蛇が組み合わさった玄武も伝えられてきました。

八代のガメも、亀と蛇が一体となった姿をしています。

その造形の背景に、どのような意味が込められていたのでしょうか。

今のところ、八代の亀蛇と中国の古い亀蛇観を直接結びつける史料は見つかっていません。

それでも、二つの姿を並べてみると、亀と蛇が一体になるという造形そのものに、あらためて目が向きます。

八代のガメを、妙見神の乗り物として見る。

そして、中国の玄武や古い亀蛇観と並べて見る。

同じ姿にも、いくつもの見方があるようです。

参考

  1. 永谷恵「亀の中国思想史-その起源をめぐって-」
    全文を読む
  2. コトバンク「玄武」
    玄武の解説を読む
  3. 八代市「妙見宮祭礼の亀蛇舞い」
    八代市公式の解説を読む

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